日並ぶ

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ウタウキカイ(絵に関連はない)

ウタウキカイ(絵に関連はない)

なんか探ってたら出てきたので、うpします。ちなみにサイトの連載とは一切関係ありません。そして、たぶんBLです。それでもいいよって方は、どうぞ↓


ウタウキカイ


 また、貴方に会える日を待っています。

 祖父が亡くなって、彼が所有していた財産を引き継いだのは、孫である俺だった。本来なら、両親や伯父・叔母が引き継ぐべきものだったのに、彼は遺書という手段で俺を相続人とした。別に親しくもなんともなかった孫なのに。親戚の不審な目は、むしろ当たり前だった。
 そうして、七月。俺は、両親とともに引っ越してきた。このなにもない田舎に。ようやく高校にも慣れてきたというのに。だけど、仕方ない。それが、財産を引き継ぐための条件だから。

「高幸、さっさと片付けなさい」

 お袋の言葉に急かされ、俺は部屋に積み込まれた段ボールに手をかけた。片付けるというより適当に出していく。そうなれば、結局床一面に物が広がってしまうことは確実だ。廊下を往復して、俺の部屋を覗き込んだお袋に怒鳴られたのは、言うまでもない。
 じりじりと照りつける太陽を背にして、涼しい裏庭に入った。都会で育った俺にとっては、そこを歩くことは、冒険と同じものだ。鼻歌を歌いながら、影へ入る。奥へ奥へと進む。灰色がかった濃い影の色に沈む景色は、どこか別世界へ行ってしまいそうな感覚を覚える。

「おわ、すげぇ」

 ふいに目の前に聳え立つ壁が立った。見上げれば、時代がかった屋根と小さな窓らしきもの。視線を戻せば、重そうな観音開き。テレビの中でしか見たことがなかった、蔵だった。
 威厳のある佇まいに、なんとなく好奇心をくすぐられる。俺は、躊躇いもなく、蔵へ入っていった。それが、あの日々の始まりだった。

 暗い。そしてひんやりしている。夏も真っ盛りというのに、外の気温とだいぶ差がある。影にある中の、さらに暗い場所にあるせいなのか。その辺りは、よくわからないけど、とても過ごしやすかった。

「なんだこれ」

 読めねぇな。そんなことを言いながら、蔵の中を見て回る。古ぼけた絵付き壺や、ミミズのような文字が書かれた、和綴じの本、他にもいろいろ古いものがたくさん。





 これが、生きる方法なんだ。そう自分を説得しようとして、何度も抑え込もうとして、それでも涙は溢れた。

「ありがとうございました」

 褥から立ち上がり、中年の男に頭を下げる。男は、得意げな顔をして軍服を着こみ、玄関で一呼吸。僕は、期待に応えるために、駆け寄って見上げる。そして、何も考えずに笑顔を浮かべて、待ってます、いってらっしゃい。男は、下卑た笑みを浮かべ、僕の額に口づけをする。

 僕は、出て行った男の背中が扉の隠された後も、ずっとその場に立っていた。男のために伸ばした爪が掌に食い込む。

 男が体を売るというのは、ありえないとあの人は言うんだろう。意外と需要があるんだよ。誰もいなくなった部屋で、そう呟く。男の手の感触が消えない。ぬるめの湯を浴びながら、ざわざわする肌を撫でつけた。



 手にした金を食べ物に変えて、スラム街へ一路向かう。ぼろぼろの衣服をまとい、痩せた人々が道にたむろする。周りの家も、みすぼらしい雰囲気に変わって、素材も石から木へ、段ボールへ。他国の人間が置いていったスクラップの山を横目に、さらに奥へ走る。見えてきた、修道院。痩せた修道女が、僕に気づいて厳重に鍵をかけられた玄関を開く。

「おかえりなさい、アレン」
「ただいま、シスター」

 あまり柔らかくない彼女の腕の中で、涙が落ちる。ああ、泣き虫だな。からかうように言われたその言葉が耳の中で蘇った気がした。黒一色の布に身を包んだ彼女に、持ってきた食糧と、残りの金を渡す。彼女は、ごめんね、と言って捧げ持つように受け取った。

「シスター…?」
「あ、アレン!」

 そんな言葉を皮切りに、僕は小さな子供たちにたちまち囲まれる。黒い肌をした彼らは、一様に痩せていた。

「ただいま、みんな」



 僕は、戦災孤児だった。そして、修道院で育った。スラム街にあるそこは、やっぱり貧しくて、子供たちはいつもお腹をすかせていた。ここを巣立った子供たちの支援もあるけれど、やっぱり孤児からの出世は難しく、それは雀の涙ほどでしかない。それに、彼ら自身の生活もある。シスターは、彼らの情報に敏感だった。だから、彼らの生活が少しでも悪くなると、送金をやめるように申し出た。

 だから、僕らは、シスターの負担を軽くするために仕事を探した。無学の僕らでもできる仕事は、支払われる金も少なければ労働条件も酷い。それでも、競争率は高かった。戦争で疲弊したこの国には、戦災孤児ばかりだったから。

 そんななか、僕の元にある人が訪れた。彼は、きちんとした身なりの青年で、NGOという団体に所属しているらしい。彼が言うには、孤児たちの生活を改善するために活動する団体だと言う。黒髪黒目で黄色の肌。アジア人だと一目でわかる彼は、エキゾチックな雰囲気の美しさを持っていた。

「では、これから援助させていただきますね」
「はい、よろしくお願いします」

 彼らの心ばかりのお金は、子供たちの食費にすぐ消えてしまった。それでも、運営はかなり楽になったという。それを聞いて理解できる年だったのは、僕くらいなものだったけれど、大人たちの雰囲気に引きずられたのか、ちびたちの笑顔が増えた。周りの大人と一緒に僕も、彼に感謝していた。



「大丈夫?」

 聞き覚えのある優しい声。思わず見上げてみれば、黒髪黒目の、あの人だった。優しく細められた目に、驚いた顔の僕が写っている。それが、やけに印象的だった。

「どこか傷でも作った?」
「え、いやっ、違う…」

 彼の目に吸い込まれそうだなんて考えていた事が恥ずかしい。唐突に、ここが往来のど真ん中だということに気がついて、僕は慌てて立ち上がった。そして、ポケット確認して、お金が無事だったことに安心する。彼は、そんな僕の様子に気がついたのか、

「もしかして…まだ働いてる?」
「え…もちろん」

 そう答えれば、わかっていたはずなのに少し落ち込んだように目を伏せた彼に、なぜか罪悪感を覚えた。

「やっぱり、足りないよね…あれだけじゃ」

 少し歩いて口を開いた彼が言ったのは、諦めが入った落胆の言葉だった。それは、事実だったから、僕はなにも言わなかった。でも、彼が時々来てくれることは、すごく嬉しいと思うと掌に込めた。それは、彼らが援助を申し出てくれてから、数か月たったあとのことだった。

 何度か顔をあわせるたびに、彼は、子供たちから信頼を勝ち取り、彼らの名前を覚えていった。彼が、直接、孤児院に訪れることもあれば、街中で仕事中に出会うなんてこともあった。

 そんなときだった。

 修道院にやってきたのは、あの人ではなく、立派な服装をした男性だった。



主人公の立ち位置として、えろが入りそうですね。なんだったんだろう。タイトルは、toyaさん作曲の「唄ウ機械」からいただきました。メモの中に入っていたものをそのまま流用したので、どういうつもりで書こうとしたのかさっぱりです。
予想としては、アレンくんがウタウキカイなのかなぁと思うものの、なんか雰囲気違うっぽい。唐突に話変わってるんですけど、おそらく孫くんが手に取った日記(らしきもの)の中身。つまり、過去編になるんじゃないかな、と。

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