「サブロウ」
足元に暖かく柔らかなものが絡まる。手探りで彼女を抱き上げた。彼は、光の予測通りにわざとらしく音を立てていた。嗜虐性を感じさせるそれに、彼女が反抗したらどうなるだろうか。暖かな毛並が擦れて、痛痒い。
「一緒にいてくれてありがとう。ごめんね」
かん
近づいてくる音に身体が震える。光は、彼女を抱きしめて、手触りのいい毛と獣臭い臭いを感じた。頬に水気のあるものを押しつけられる。
かん
か細い声が願いを請う。誰かを呼んできて。淡い期待と胸を覆い尽くす恐怖。それを察したのか、子犬は、任せといてとでも言うように元気な声をあげた。理解しているのか。それとも単なる光の願望か。
「…お願い」
かん
それが合図だったかのように、手の中の温もりは擦り抜けていった。
没ページをサルベージしました。サブロウは、光のことが大好きなので、きっとわかってくれる。ただ、光が子犬に願いを託すシーンが書きたかっただけなんだ…。
イラストですか? これから色を塗るドラゴンです。血塗れにしたい。
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